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8歳から12歳の子どもに多いストレスによる視力低下。
「学校の視力検査で急に視力が落ちた」「黒板の文字が見にくくなった」「ゆがんで見える」「二重に見える」など、視力の低下や視機能の異常がある場合、それは『心因性視覚障害』(機能的視力障害)かも知れません。
心因性視覚障害とはあまり聞きなれない病名ですが、最近、小学生の目の健康面から大きな問題となっている病気なのです。
心因性視覚障害は、8歳から12歳の子どもに多くみられ、比較的に急速に視力が低下します。ところが、子どもは視力低下を自覚することがあまりなく、日常生活ではほとんど不便を感じていないため、自分から症状を訴えてくることがないのです。
そのため、学校での視力検査などで発見されることが多いのです。また眼科医にいっても「原因不明の視力低下」などと診断を受けたりするケースがあったりします。なぜでしょうか?
検査をしてみると、例えば目の屈折力(光を屈折させるカ)は正常で1.0見えるはずなのに、視力検査表では0.3以下しか見えないことが多く、メガネをかけても視力はでません。
例えば、視力低下の原因で多いのは、近視や遠視などの屈折異常です。屈折異常はメガネをかければ視力がでますが、屈折異常がなくても視力がでない場合は、メガネでは対応できないのです。
そして、眼球や視神経に何も異常がないとき、心因性視覚障害を疑うことになります。
そのほかの特徴として、視力が診察日ごとに上下にばらつきがあったりします。
また、視野にも変化がみられるそうです。視野とは、それぞれの目で見える範囲で、方眼の視野の大きさは水平方向が約140~150度、垂直方向は130~140度あるのが普通です。が、心因性視覚障害の子どもでは、視野検査中にどんどん視野が狭くなってしまう『螺旋状視野』(らせんじょうしや)などを示すことが多くあるのです。
発症時の年齢は8歳~12歳の子どもに多いそうです。女児では8~11歳、男児では8~12歳ごろにピークがあります。女児のほうが男子より3~4倍多いといわれています。
※『心因性視覚障害』を最近は「心因性」ではなく、「機能的」視力障害、「非器質的」視力障害という用語が使われるようになったそうです。ここでは、従来のままの『心因性視覚障害』で統一しました。
ちょっとしたストレスが原因となって起こるとして考えられ、肉親の死とか、両親の離婚、受験を控えている、塾や習い事が忙しい、友達と馴染めない、など家庭や学校での人間関係などの問題があります。女児では、原因として眼鏡願望が最も多く多く見られたそうです。
心因性視覚障害は、難しい表現でいうと、本人が自覚しないまま、心理・社会的な因子に影響され、環境に過剰適した結果、うっ積されたストレスが身体的に表現された機能的な障害であると考えられているのです。
自分の気持ちや欲求を抑制している状態が続くと、ストレスや不安で自律神経のバランスが崩れ、視覚に関係する部位の血流や脳血流の低下を引き起こし、「黒板の文字が見にくい」「ゆがんで見える」「二重に見える」など、視力の低下や視機能の異常に繋がるらしいのです。
大人でも、ストレス等によって筋緊張が長期におよぶと、末梢血管が収縮します。つまり手足は冷たくなります。心臓はドキドキし、
・目が疲れやすい
・肩がこりやすい
・背中や腰が痛くなる
・朝、気持ち良く起きられないこと
・頭が重い
などの症状が出ることもあるのです。
原因となっている心理的な問題については、ストレスの原因を取り除くことが大切ですが簡単に解決できる場合が少なく、学校の担任の先生や保護者とも相談して長期的な視点から経過を見る必要があるとか。
大多数の例では、心因性視力障害で失明することはなく、定期的な検査をおこない、経過を観察するうちに視力が改善。1年以内に治癒するケースがほとんど。3ヶ月以内に70~80パーセントが1.0以上に回復するそうです。
学校の定期検査で、再発がみつかることもありますが、7~8%程度です。
話が前後しますが、心因性視力障害を確認する方法として「トリック検査」があります。例えば、子どもに+0.6ディオプトリーのレンズと、-0.6ディオプトリーのレンズを組み合わせたレフラクターをかけ、「このメガネをかけるとよく見えるよ」と暗示をかけておくと、視力が1.0になったりします。これが「トリック検査」です。
プラスとマイナスのレンズが打ち消しあって、レンズ越しでは裸眼で見ていることと同じなのですが、子どもはそれに気づかず、視力が1.0になるのです。
心因性視力障害の治療では、「トリック検査」同様に”度のないメガネ"を一時的にかけてもらうこともあるとか。また、一般には内服薬などは使いませんが、子どもの不安が強いときには、薬剤を使用することもあります。
心因性視覚障害は、保護者などの大人が、客観的にストレスの強弱を評価することより、むしろ子ども自身がどのぐらい衝撃を受けているのか、というか主観的な評価が重要で、それを理解し対処することが早期治癒につがるらしいのです。子どもとのコミュニケーションを絶やさず、不安を与えない、それが改善のための基本です。
お子さんが「学校の視力検査で急に視力が落ちた」「黒板の文字が見にくくなった」とわかったら、眼科医を受診しましょう。
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